どんなことだって乗り越えられる?
 答えはNO。越えられない壁だってある。
 ”世界”って存在、とか。




大切な人ほど傷付けてしまう


 


 嬉しいことがあった。ディーノさんとの未来が描けたこと。
 帰ってきた恭弥に二人で告げれば……そりゃもう大変なことになった。
 今までに見たことのない剣幕で恭弥はディーノさんに掴みかかった。救いはトンファーを握ってなかった事かな。スパンと気持ちの良い右ストレートが決まったけど。
 もう一発殴ろうとする恭弥を止め、ディーノさんには一旦帰ってもらった。とりあえずアイスノンを渡しておいた。

 作っておいた晩御飯を温める。その間に恭弥は着替えに行ったのかリビングにはいない。
 さて、どうしよう。
 正直ディーノさんからプロポーズされると思ってなかったし、自分がYESと返事するとも考えてなかった。
 初めて出会ってから四年も経つのである。そりゃあ二人で出掛けたことは何回もあるが、恋人と呼ばれる関係だったわけでもない。今思うと何段階か過程素っ飛ばしてると思わないでもない。
 ディーノさんと触れ合ったことなど数えきれるほどしかなく。頭を撫でられたり、ディーノさんが転ぶのを防ぐために手を繋いだり。
 あれ? ていうか、ディーノさんはいつ私に好意を抱いたんだろう。
 昔からマメにプレゼントしてくれていたけど、人にプレゼントするのが好きなのかと思っていた。考えてみるとアピールしてくれていたのかもしれない。
 
 思考を巡らせながら一番大きいハンバーグと副菜を皿に盛りつける。暖め過ぎたスープは二人分。
 流石に二食食べるわけにもいかず。スープくらいは良いよね。



「やっと食べれる」
「お疲れさま、恭弥。引き継ぎ時間かかったねー」



 ペタペタとスリッパを鳴らしてやってきた不機嫌な弟。
 静電気か何かで乱れている髪を手櫛で直してやる。時とともに開いた身長差に手足をグッと伸ばして。
 目を瞑ってる様は本当に黒猫みたい。
 キリのいいところで終わらせ、向かい合って座る。
 さっそく恭弥はメインのハンバーグを一口食べた。



「美味しい」
「ありがと」



 それ以降は黙々と食べ物を口に運ぶ恭弥。
 ふむ。どうしたもんか。とりあえず、すぐに結婚するかはわからないけども、この難攻不落っぽい弟を攻略していかねば。



「ねえ恭弥「本当に結婚するの」」



 遮られました。



「するつもりだよ」
「なんで」
「プロポーズされたから」

「あの人が好きなの?」



 ――――難しい質問です。
 好きなのかと聞かれれば好き。愛してるかと聞かれれば、私は愛していないと答える。
 でもね。
 ディーノさんとなら未来を見れるって思ったの。恭弥といても幸せだけど、いつまで続くか分からない。



「ディーノさん、一緒に居たら楽しい。この人とだったら未来があるって思えた」
「ふうん……がそれで良いなら、僕は認めるよ」
「恭弥……」



 まさかこんなにあっさり認めてくれるとは思わなかった。シスコン気味の恭弥が……!
 ゆっくりと私と目を合わせ笑う恭弥。にっこりと、綺麗な笑み。
 ……お姉ちゃん、何だか怖いです。



「ただし、最低二年は健全な付き合いをしてもらうよ。もしもちょっとでもあの人が姉さんに手を出したら――――咬み殺すだけじゃ済まさない」



 ワオ。ディーノさん、弟は本気です。頑張ってください。










 ディーノにプロポーズされてから二年経った。
 私はそういうことに関して淡泊だったのでまだ平気だったけど、ディーノはものすごーく頑張ってくれたと思う。
 たまに恭弥の目を盗んではキスくらいはしてたけど、それ以上はしなかった。
 でも私がくっつきたがりになる時がたまにあって。ディーノの右手がプルプル震えたことも何度かありました。良い思い出です。

 なんだかんだで両親も賛成してくれて、ディーノのファミリーも納得してくれたらしい。
 恭弥は一言で表すと”壮絶”だったけど自分が言い出したことなので渋々認めてくれた。

 結婚式まであと二日。籍はまだ色々と問題があるので入れない。
 しかしディーノの所と同盟を結んでいるファミリーも参加してくれるとのことで、中々盛大っぽい。
 ここまでマリッジブルーにならなかったが、ここのところ少し不安である。

 私はこの世界の人間であると同時に、この世界の人間ではない。
 前の世界では好きな人と結ばれたら……世界から弾き出されてしまった。
 ――――駄目だ。今まで考えないようにしていたのに。どんどん世界に対する不信と不審が心に積もってくる。
 嫌だ。嫌だ。やだ。やだ。やだやだやだやだやだやだ。もうあんな思いはしたくない。
 大切な人たちをなくしたくない。
 
 必要以上に好きにならないと思っていたこの世界。
 恭弥が好き。大切な弟。私の半身。時々オカンか! と突っ込みたい時もあったけど、そんな過保護なところも大好き。
 ディーノが好き。大切な人。私の未来。どうしようもないほどに不器用でへたれで。でもその力の抜ける笑顔が大好き。
 この世界の両親。並盛に住む人たち。私が雲雀として生まれ、関わってきたすべての人たち。けっこう、好きです。

 私は、怖い。









 結婚式当日、花嫁は現れなかった。


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暗い展開ですみません。
結婚式に花嫁現れないって最悪ですよね!

2009.09.26

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