私は恐れていたらしい。
 思ったよりも好きになってしまったこの世界。
 そこからはじき出されるのを。





毒林檎でも構わない





 この世界に生まれて18年。恭弥と一緒に並盛高校へ進学し、三年になった。
 高校は中学より出席日数に厳しいので、毎日恭弥に無理やり連れて行かれている。
 たまにずる休みするけど。
 恭弥はあまり変わらない。昔より背が伸び、細身だけど筋肉も付き大人な顔つきにもなった。しかし私に甘くヒバードに優しく誰よりも並盛町が好き。昔と一緒だ。
 私も変わらないかもしれない。身長は162cmで止まり、髪が伸びて女らしい体つきになった。苦しいことが少ないこの世界で、平和に時にバイオレンスな事態に遭遇しながらも、幸せだ。

 幸せを感じているからか、諦めていたはずのことがとたんに怖くなった。

 私はいつまでここにいられるのか。
 いつまで恭弥の傍に、姉としていられるのか。
 ――ネガティブだなぁ、私。今は考えないでおこう。





 

 高校を無事卒業した。
 恭弥は風紀委員のことで遅くなるから、と帰りはディーノさんが迎えに来てくれた。
 今日は私が晩御飯を作らなくてはいけない。恭弥の好きなハンバーグにしよう。
 帰り道にあるスーパーに寄る。買った物はディーノさんが持ってくれた。
 街路樹の続く道を二人で歩く。



「しっかし、も恭弥も18になるのか〜」
「来年は19、再来年は20になるね」



 出会った当初は敬語を使っていたが、四年の付き合いにもなるとディーノさんに押し切られてタメ口になってしまった。
 たまに丁寧語使うけど。
 歩道を通っているが、自然に車道側を歩いてくれている。紳士だなぁ。何気なくディーノさんの顔を見ると……面白かった。何か、切羽詰まった感じだ。



!」
「はい?」



 急に名前呼ばれるとびっくりするんだけど。切羽詰まっていたディーノさんは、真剣な表情で私を見つめている。
 ――そのまま、五分経った。
 真面目な話っぽいから待ったけど、私はそんなに我慢強くない。



「なに?」
「へっ、いや、あのな……きょ、今日ハンバーグなんだよな! 俺も御馳走になってもいいか?」
「別にいいけど……」
「そうか! 楽しみだな〜!!」



 結局話をそらされてしまった。まあ、大事な話なら後で言うでしょう。
 




 

 
 ハンバーグをメインにスープやサラダ、細々としたものも作り終わった。
 恭弥はまだ帰ってこない。電話で遅くなるから先に晩御飯を食べるように言われた。
 私一人ならば待っているのだけれど、今日はディーノさんもいるからお言葉に甘えることに。
 それに、恭弥が食べる時にまた食べたらいいしね。そこ、太るとか言わないで。

 ディーノさんと向かい合って座る。



「美味そうだな! いただきます」
「はいどうぞ。いただきます」



 初めてご飯食べに来た時もだけど、相変わらずディーノさん食べるの汚いなぁ。
 でもすごく美味しそうに食べてくれるのが嬉しい。そして微笑ましい。
 そっと微笑み。ディーノさんが食べる様子をしばらく眺めていた。
 ディーノさんに気付かれ、恥ずかしそうに



「……なんだよ」
「美味しそうに食べてくれるなあって思ってただけよ」
「初めて食べたオムライスもだけど、の作るものは全部美味いぜ?」
「恭弥の方が料理上手だよ。私滅多に作らないもん」



 作れないこともないが、ただ単に面倒くさい。
 ディーノさんはその含みに気付かず輝く笑顔で言った。



のだから美味いんだよ! ずっと作ってほしいくらいだぜ」
「ふーん……え?」
「え?」

「「…………」」



 今凄いこと言われたような。……気のせい?
 ぽかーんとしているとディーノさんは真っ赤になった顔で叫んだ。



「け、けっ、けっこんしてくれないか!?」



 恭弥……お姉ちゃん、プロポーズされました。
 八歳差はこの際置いといて。
 ディーノさんとの結婚生活。想像してみたら、悪いものじゃなかった。
 気付いたら返事していた。



「――はい!」






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出会った当初:ディノ22歳 主人公14歳
プロポーズ時:ディノ26歳 主人公18歳

半年以上ぶりの更新です。
これとあと二話分は書く内容決めてあるんですが、なかなか書く気が起こらなかったです。
恭弥出てこな―い。


2009.09.19

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