僕と同じ黒色の髪。僕と同じ形の瞳。僕より7センチ低い身長。僕と同じ形の唇で呟く言葉は――――「咬み殺しちゃうよ?」





雨で隠した一筋の涙






 カードを差し込む前にドアノブを回すと鍵が開いていた。先に帰っているのだ、と瞬時に理解する。
 玄関に入ると靴はきちんと揃えられていた。
 真っ直ぐリビングへ向かう。
 入ってすぐ目に入る白のソファに彼女は座っていた。



「ただいま」



 羽織っていた学ランをハンガーに掛ける。
 返事がないのに少しムッとしながら再び彼女に目を向けると、更にイラッとした。
 


「恭弥」



 咎める声。僕は短く「何」と答えた。



「何じゃない、それ返して」



 彼女の声を無視し、隣に座りながら本の表紙を見る。本のタイトルは「People Who Don't Know They're Dead: How They Attach Themselves To Unsuspecting Bystanders and What to Do About it」と書いてある。日本語に訳すと「自分が死んだことを分かっていない人たち:彼らはどのように疑うことのない傍観者に属し、いかにして対処したか」、著者はGary Leon Hill氏らしい。
 


「何この本」
「2006年度最も変なタイトルの本大賞受賞作」



 顔を顰めながら聞くと、彼女も同じ表情で答えた。
 機嫌が悪そうだ。僕が本を奪ったからだろうけど。
 返事をしなかったお返しも済んだことだし、とこの変なタイトルの本を渡す。すると彼女は興味無さそうにソファの端へと置いた。



「もういい。お腹空いた」



 生まれた時から一緒にいる。彼女の気まぐれにも慣れた。



「今から作るよ。ちょっと待ってて姉さん」
「ん。早くしないと咬み殺しちゃうよ?」
「ワオ、僕に勝つ気?」
「冗談だし」
「そう」



 小さい時から姉さん――雲雀――は僕の口癖を真似る。使う用途は違うみたいだけど。
 学ランを脱いだだけのシャツとスラックス姿。その上から黒いエプロンを着る。
 姉さんの鉱物を作りながら考えた。
 僕と双子なのに姉さんは運動神経が悪い。勉強も普通。でもどこかおかしい。
 広い視野を持っているかと思えば、どれも興味がない。自分の好意は素直に表すのに、他人から向けられる好意にはひどく臆病になる。
 鈍感なんだけど、変なところで察しが良い。

 そして、たまに遠くを見ている。
 此処でない何処か。
 
 双子だけど分からないことがいっぱいあった。けれど同じくらい知っていることもあった。 

 だから最後は気にしないことにする。
 姉さんの見ている先に僕の知らない世界があっても。



「姉さん、ご飯出来たよ」
「おー。恭弥ありがとー!」



 ――姉さん、明日は学校に来てもらうから。
 ――え、明日はときメモGS3が発売だから無理!
 ――咬み殺すよ?
 ――咬み殺されようが何だろうが無理なものは無理!







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雲雀さんに「姉さん」と呼ばれたいがために書いたものです(笑)。
今度は雲雀さん以外のキャラと姉さんの遭遇を書きたいです。
そんでどっかで見たことある人だなぁ、と思ってたら、雲雀の姉さんだった!ってビックリされたい。
書くなら誰が良いかなぁ。

雲雀さんが偽物なのは仕様です。

2008.08.30

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