カシオペイア






 それはCZメンバーが中学二年になった年、中学に上がってから初めてのクリスマスパーティーをする全日のお話。
 パーティー用に作る央のケーキを味見するという名目で英宅にはお邪魔していた。


「この大きいのは私の!」
「それは無理です。央の物は僕の物。僕の物は僕の物。つまり、この大きい部分は僕の物です」
「その理屈はおかしいわ」
「央の作る物と言えば宇宙の某が地球を作った物と同じ。本来ならば央の弟たる僕が全て食すのですが、央の優しさに免じて貴女に分け与えようとしているのです。だからこの大きな部分は僕が食べます」
「それなら、私だって央に招待されたのよ? 誰よりも食べる権利があって当然じゃない」


 招待されたというか、央がケーキの味見役を募った時、一番に反応したのがだった。そりゃあもう、凄く央のケーキを楽しみにやってきた。

 理一郎辺りなら円を上手くさばくんだろう。
 しかし、央に好意を持ち始めたは言い返してしまう。

 美味しいケーキに釣られてとかではない、決して。
 そんな言い合う二人に央は


ちゃんも円も、まだケーキはあるんだから……」


 あの明るい央が申し訳ない顔をしている――央大好きコンビは、大人しく均等に別けることにした。
 今度はどっちが正確に別けられるかについて討論になるのだが。


「あ、ちゃん」


 ケーキを存分に食べ満足したのか、円は両親のいる部屋へと向かった。
 はイブに央と二人っきりになれて嬉しい。たとえ少しの間でも。


「なあに、央」
「これ」


 渡されたのは薄いピンクに包まれた箱。赤いリボンが可愛らしい。


「これ……?」
「ひと足早いけど、クリスマスプレゼント」
「え! 明日皆でプレゼント交換するわよ」


 間違えてない?とは首をかしげる。


「間違えてないよ。開けてみて!」
「ありがとう」


 まだ疑問を抱えながらは リボンをとき、丁寧に包装紙をとる。そして小さな箱をそっと開けた。


「これ……」
「円に教えてもらいながら作ったんだ! ちょっと下手だけど」
「そんなことない。とっても嬉しい……ありがとう円!」
「えへへー」


 二人で笑いあった。
 箱の中には確かにちょっと不格好なストラップが入っていた。そこにはビーズで出来たウサギのマスコットが付いている。


ちゃんウサギ好きだったよね」
「え……?」
「六年の時、喋るウサギずっと持ってたでしょ?」


 思い出してみる。確かにCZメンバーで課題をしていた一ヶ月、ウサギのマスコットを持っていた。
 あれは、どこに行ったのだろう。
 はあまり物を失くすことがない。それなのに、あのウサギの場所だけは思い出せなかった。
 記憶の奥深くにある気がするのに――。


ちゃん?」


 考え込むを心配したのか、央が箱を持っている反対の手を握ってきた。
 央から手を伝って、熱がの冷えていた身体を暖めていく。

 その温もりに心から安心できた。


「いいえ、何でもないの。素敵なプレゼントありがとう央」


 の笑顔に央の頬はさっと赤く染まる。


「ううん! ちゃんに喜んでほしかっただけだから」
「あ……。でも、私何も用意してないの。ごめんなさい」


 しゅん、と落ち込む。慌てて央がフォローする。


「ハイハーイ! なら、僕の言うこと一つ聞いてくれるっていうのは? なんちゃってー」
「いいわ」
「ええー!?」


 じっと央の目を見つめながら


「だって、央はこれを作るために凄く頑張ってくれたでしょう? 私、本当に嬉しいの。今まで貰ったプレゼントの中で一番嬉しいわ」

 本当に嬉しいと言わんばかりに頬を緩める


「だから、私に出来ることなら何でも言って。私も央に喜んでほしいの」
、ちゃん」
「なあに?」


 そう言えば、手を握られたままだった。


「央、この手……」


 その手に引っ張られ、の声は央の胸に吸い込まれた。
 呆然としていると、背に回された腕の力が更に強くなる。息苦しいので顔を上に上げると、央のうなじが見えた。
 央はの頭に顔を埋めていて、必然的にの顔は央の肩の上に。

 央の背はいつこんなに高くなったんだろう。あの頃の自分たちはそんなに差がなかったはずだ。一体いつ――。

 そこで漸く気が付いた。
 もう、あの頃の私たちじゃないのだと。


 はそっと央の背に手を回した。ビクッと央の身体が揺れる。
 それでも、ぎゅっと抱き締めた。前から好意を持っていた。
 それが"恋"という感情に変わった今、央が愛しくとたまらなかった。

 切なくて愛しい。
 胸をギュッと掴まれたようなこの気持ちが、このくっついた所から央の身体に入ればいい。そうして央も同じ気持ちになってくれれば良いのに。
 は心の中でそう祈っていた。


ちゃん」
「なあに?」


 さっきのやりとりを繰り返す。
 掠れた声が頭上から響くのに、は何だかむずむずした。
 甘い香りがの鼻を擽る。


「さっき言ったこと、本当?」
「さっき……ああ、何でも言うこと聞くって言ったことね。本当よ」
「何でも?」
「私に出来ることなら何でも」


 の髪をひと撫ですると、央はそっとの身体を放した。
 両手をギュッと握り、の目を見つめる。
 さっき想いを自覚したは頑張ってその視線に耐えた。


「僕と、付き合ってほしいんだ」


 一度視線を落とし、またの目と合わせた。


「小学六年の課題の授業。あれ受ける度にちゃんのこと好きになっていったんだ。本当はね、明日言おうと思ったんだよ? でも……」
「私も央のこと、好き」


 まだまだ長くなりそうな央に焦れ、も想いを告げた。


「えっ? 本当!?」
「ええ」
「僕と付き合ってくれるのっ?」
「もちろんよ」


 やったー!と、また央はを抱き締めた。も抱き締め返す。

「これからもよろしくお願いしますっ! えへへー」
「こちらこそ。よろしくね、央」


 温かい腕の中では明日のことを考えた。
 発表して皆を驚かすか、内緒にして二人で楽しむか。

 どちらにしろ、今は思いの通じあった央との時間を大切にしよう。
 時間は、いつなくなるか分からないのだから。


(ねえ央、やっぱり明日の大きい部分は私のにしてね)





最初は主人公と円のクリスマスケーキ争奪戦を書くつもりが、いつのまにかこんなことに。
最後は収集つかなくてぐだぐだになってしまいましたが、雰囲気を楽しんでもらえれば幸いです!
央夢が増えますように!
メリークリスマス!


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