背筋を冷たい汗が一筋、流れて行った。
 私の玉依姫としての人生はまだまだループしていくらしい。

 えっと、嘘、だよね?





緋色の欠片 2話









 ぼおっと学校の廊下を歩いていたら、曲がり角で誰かにぶつかってしまった。
 咄嗟のことで反応できない。仰向けで廊下へ倒れていく。あぁ、このままだったら頭ぶつけるなぁと思ったけど、受け身なんかとれやしない。
 痛いぞ、という覚悟を決めたその時。

「止まれ!」

 ピタッと不自然な形で止まる身体。
 なんだこれ。重力に逆らってるよ!
 もう、この世界は何でもアリだな……。

「あの、大丈夫ですか? ……すみません、ぼうっとしていて……」

 カクン、と急に身体を固定していた何かがとれて足の力が抜ける。
 やっぱ倒れるのか……と半ば諦めて目をギュっと瞑った。
 
「大丈夫ですか?」

 温かい腕の中で、頭上から降ってくる声。そのやわらな声に目を開け、恐る恐る顔をあげる。――そこに居たのは、すごく可愛い男の子だった。
 女の子みたいな顔だけど、その大きくて優しげな瞳をじっと見つめていると、心がほわほわした。
 うん。癒される!



 これが私と慎司君との出会いだった。






 

 最初は可愛い弟分、としか思ってなかった慎司君。
 でも今では大切な仲間……ううん、それ以上な存在になっている。
 まさかこのわけわかんない世界で大切な人が出来るとは思っていなかった。
 玉依姫としての責任はきちんと取ろうと思っていたし、げぼ……でなく、私を守ってくれる!と打算で近づいた守護五家も大事な馬鹿まだと思っている。
 ババ様だって、玉依姫として仕方なく(言い方は悪いけれど)黒い部分に手を染めてこの村を守ってきたんだ。
 私は”私”で、この子じゃないんだけど、それでも、この季封村が何より愛しく感じるようになったんだ。

 そして何より、慎司君が大切。
 明らかに美鶴ちゃんが慎司君にたいしてツンデレなのは分かっていた。
 好きじゃん、とも理解していたけど、そんなの譲るつもりもなくて頑張った。
 年甲斐もなくアタックしたよ(あくまで今は高二)。
 本当の年齢だったら慎司君と三歳差だけど、犯罪ではない。アリだアリ。



「綺麗って言うだけなら、先輩だって十分綺麗じゃないですか」
「先輩とゆっくり歩くの、僕は嫌いじゃないですよ」

 慎司君は天然で甘いことを言ってくる。しかも照れながら。お前、これで落ちなかったら女じゃねえべ?
 と、思っていたら男前なところもあるんだ。

 辛いことも悲しいことも、慎司君となら乗り越えられる。
 慎司君と会えただけでこの世界に来て、この子になって、玉依姫となった意味がある。
 そう思っていた。
 慎司君の過去も、現在も、未来も。全部守ってやる。
 そう思っていた。
 


「僕は、先輩、あなたを守りたい。あなたが大切だから、逃げたくない」
「この人は傷つけさせないっ! 絶対に――!!」
「あなたは僕に強さを教えてくれた。あなたが居たから僕はここまで来れたんだ」

 君がくれた言の葉の数々。私は忘れない。

「いやだ――――逃げない。僕は皆を、あなたを守るって決めたから!」

 ドライに立ち向かっていった姿も。

「お前ごと、鬼斬丸を壊す!!」

 未来を望んでくれたささやきも。

「これからもずっと、傍にいて……いいですか?」



 慎司君が居たら、どんなことだって乗り越えられる。
 自分でもびっくりするぐらいなことを思ってたんだよ?

 ――――それなのに、こんな仕打ちないよ。








 気付いたら、ド田舎にいました。
 






 ――――そう、すべてが終わったはずなのに、振り出しに戻っていた。






先輩、僕はずっと、……あなたを想っていますから」



 慎司君の言葉が風に乗って聞こえた気がした。





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ちょっと恋愛をしてみた。でもある意味悲恋?
守護五家を攻略しないとこの世界から抜けな出せない、みたいな感じです。
鬱ですみません。
2008.08.15


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